お一人様ご案内

社会の厳しさを知らない甘っちょろい温室育ちの日記

青い主人公のお話

今週のお題「わたしの好きな色」

お題というものの存在を知ったので、初めて挑戦してみようと思います。

 

私が好きな色は青い色です。濃さを問わず、空の青色も海の青色も、青色に属する色なら何でも好きです。中でも一番好きな青色は、私が小学生の頃に遊んでいたゲームの主人公の青色です。

 

私が小学生の頃から今もずっと大好きなゲームの主人公の話をします。

その主人公は小学生の男の子で、相棒と共に悪を倒して世界を守るというオーソドックスな物語の主役でした。当時、主人公と同じ小学生だった私は、自分が主人公になったかのような心地でゲームを遊んでいました。何度も遊んだそのソフトは、今でも私の手元にあり、大切な思い出の一つになっています。

さて、その主人公の男の子が他の主役たちと違ったのは、彼が青い色だったことです。当時の主人公のテーマカラーといえば、戦隊もののリーダーが赤であるのが主流だったのに対し、男の子のテーマカラーは青だったのです。ゲームは大人気でアニメ化もしていたのですが、土曜日の朝に早起きして、親も寝ている時間にリビングのテレビをつけて、ワクワクしながら画面の中の青いヒーローを見ていたのを今でも覚えています。その時からずっと、私の中では青はヒーローの色なのです。

それから何年も経って、私は大学生になりました。久しぶりにゲームを起動して遊んでみると、当時の自分が設定していた主人公の武器や戦略があまりにも力押しすぎて、単純さに思わず苦笑いがこみ上げてきました。一通りクリアすると、忘れていたゲームの細かい部分を思い出してきて懐かしさが胸に広がります。エンディングで主人公が小学校の卒業式に出るのですが、そこで彼が小学生だったことを思い出し、当時同じ小学生だった彼がいつの間にか年下になっていたことにはかなり衝撃を受けました。10年少々が経つのは思っていたよりも早かったです。

エンディングで小学生だった彼が大人になった姿が語られます。彼は大人になり、自身の祖父や父親と同じ科学者になったことが明かされます。友人は住んでいた町の町長になったり学校の先生になったり、実家の会社を継いでいたり、ヒロインだった女の子が主人公の奥さんになっていたりと、彼らのその後が綴られています。そうして終盤で、過去を回想していた主人公が呟きます。

俺たち、あのころの未来にいるんだよな。

このテキストを見た時、私は思わず手に持っていたゲーム機を閉じて、机に伏しました。それから無性に胸が苦しくなりました。あのころの未来にいるのは彼だけではなく、私も同じだったのです。小学生だった頃は、将来の夢は宇宙飛行士だとかロボット博士だとか、無限に広がる未来を疑うことなく、無邪気に自分は何にでもなれるのだと思っていました。それが中学生になり高校生になり、現実を見るにつれて私の無限に広がっていた未来は小さくなっていき、毎日何かに追われるような焦燥感に駆られながら、しかし何も出来ずに日々を過ごしています。あのころの未来がこんなものなのかと、私は自分に失望したのです。世界を救った小学生の未来がこんなざまなのかと。このままではいけない、過去の自分に失望されているような未来ではだめだと私は思い、なんとか自分に恥じることのないように今を過ごしています。

 

いつかまた、あのゲームを思い出したころに起動して、青いヒーローに気付かされる日が来ると思います。あのころの未来にいるんだよなという彼の言葉に、あのころ思い描いていた未来にいる今はどうだと、自分に聞く日が来るのだと思います。そんな時、私は胸を張って、一生懸命頑張っている、毎日を後悔の無いように生きていると言えるように、私はならなければなりません。

空の青さや海の青さを見て、私は小学生の頃に出会ったゲームの主人公を思い出します。そうして、彼の言葉を思い出すのです。

私は、そして、この記事を読んでいるあなたは、あのころの未来に立っているのです。